SDGsや多様性はもう古い?次にトレンドになりそうな社会的キーワードとは
私がフリーランスとして駆け出したころ、少し前まで、社会的なキーワードといえば「SDGs」「多様性」「サステナブル」「ダイバーシティ」などの言葉がよく使われていました。
企業のホームページや採用ページ、自治体の取り組み、学校教育、イベントのテーマなどでも、これらの言葉を目にする機会はとても多かったと思います。
しかし最近では、以前ほど「SDGs」や「多様性」という言葉に新鮮さを感じなくなった人も多いのではないでしょうか。
もちろん、SDGsや多様性そのものが大切ではなくなったわけではありません。
ただ、言葉としては少し使い古された印象があり、「企業のきれいごと」「行政っぽい言葉」「研修資料に出てきそうな言葉」として受け取られやすくなっている面があります。
では、これからの時代にはどのような社会的キーワードが注目されていくのでしょうか。
この記事では、SDGsや多様性の次にトレンドになりそうな言葉や、これからの社会で求められそうな価値観について考えていきます。
目次
SDGsや多様性が古く感じられる理由
SDGsや多様性という言葉が古く感じられるようになった理由のひとつは、社会に広く浸透しすぎたことにあります。
数年前は、SDGsという言葉を掲げるだけで「先進的」「社会意識が高い」「時代に合っている」という印象を与えられました。
しかし今では、SDGsや多様性という言葉を使っている企業や団体は珍しくありません。
そのため、ただ言葉を掲げるだけでは差別化になりにくくなっています。
また、実際の取り組みが見えないまま「SDGsに取り組んでいます」「多様性を尊重しています」と発信しても、受け手には響きにくくなっています。
むしろ、実態が伴っていない場合は「言っているだけではないか」「イメージアップのためではないか」と見られてしまうこともあります。
つまり、SDGsや多様性は終わったのではなく、言葉としての鮮度が落ちたということです。
これからは、抽象的なスローガンよりも、もっと具体的で、生活者の実感に近い言葉が求められていくと考えられます。
多様性という価値観の難しさ
多様性という言葉が広がったことで、社会の中にあるいろいろな価値観や生き方に目が向けられるようになりました。
それ自体は、とても大切な変化だったと思います。
けれど一方で、多様性という言葉が強くなりすぎたことで、「多様性を受け入れるべき」「違いを認めるべき」という空気そのものが、少し押し付けのように感じられる場面も出てきました。
本来、多様性とは、人それぞれ違っていていいという考え方のはずです。
でも、それがいつの間にか「受け入れられない人は遅れている」「理解できない人は悪い」という空気になってしまうと、それはもう多様性というより、別の正しさを押し付けている状態に近くなってしまいます。
多様性を大切にするはずなのに、多様性を受け入れられない人のことは受け入れない。
ここに、多様性という言葉の難しさがあるのではないかと思います。
「受け入れられない人を受け入れる」という矛盾
多様性を本気で考えようとすると、必ずひとつの矛盾にぶつかります。
それは、「受け入れられない人を、どう受け入れるのか」という問題です。
たとえば、ある価値観を大切にしている人がいます。
一方で、その価値観をどうしても受け入れられない人もいます。
多様性を尊重するなら、本来はその両方の存在を考えなければいけません。
けれど現実には、「こちらの価値観は尊重すべきだけれど、あちらの価値観は許されない」という線引きが生まれます。
もちろん、人を傷つける言葉や差別をそのまま認めていいという話ではありません。
ただ、多様性という言葉を使うほど、「どこまでを受け入れるのか」「どこからは受け入れないのか」という難しい問題が出てきます。
誰かを守るための言葉が、別の誰かを責める言葉になってしまうこともある。
だからこそ、多様性はきれいなスローガンとして掲げるよりも、実際にはとても繊細で、扱いが難しい言葉なのだと思います。
多様性に必要なのは、正しさよりも寛容さ
多様性の矛盾を少しでもやわらげるためには、結局のところ、全員にある程度の寛容さが必要なのだと思います。
自分と違う考え方の人を、すぐに否定しないこと。
理解できないからといって、すぐに敵だと決めつけないこと。
そして、自分が正しいと思っている価値観も、誰かにとっては受け入れにくいものかもしれないと想像すること。
多様性という言葉が難しいのは、ただ「違いを認めましょう」と言えば済む話ではないからです。
本当に違いを認めるということは、自分にとって少し居心地の悪い考え方や、簡単には理解できない価値観とも向き合うことなのだと思います。
それは、とても面倒で、簡単ではありません。
だからこそ、多様性を成立させるには、正しさを振りかざすことよりも、お互いに少しずつ余白を持つことが大切なのではないでしょうか。
全員が完璧に分かり合うことはできない。
でも、分かり合えない部分があるまま、どう一緒にいるのかを考えることはできる。
多様性が本当に必要とされるなら、そこに必要なのは新しいスローガンではなく、ひとりひとりの器の広さや、受け止める余白なのかもしれません。
これから求められるのは「正しさ」よりも「実感」
SDGsや多様性のような言葉は、どちらかというと「社会的に正しい言葉」です。
もちろん、社会にとって必要な考え方ではあります。
しかし、今の時代は「正しいことを言っているか」だけでは人の心を動かしにくくなっています。
物価高、将来不安、人手不足、AIの急速な普及、地域経済の停滞、働き方の変化など、私たちの暮らしはかなり現実的な課題に直面しています。
そのため、きれいな理念よりも「自分の生活にどう関係するのか」「本当に役に立つのか」「信頼できるのか」という視点が重視されるようになっています。
これからトレンドになりそうな言葉は、大きくて立派なスローガンというより、もっと小さくて、現実的で、体温のある言葉です。
次にトレンドになりそうな社会的キーワード
人間中心
これから強くなっていきそうなキーワードのひとつが「人間中心」です。
AIの普及によって、仕事や情報発信、デザイン、文章作成、接客、教育など、さまざまな場面でAIが使われるようになっています。
一方で、AIを使えば何でもよいという空気には、少しずつ疲れも出てきています。
AIで効率化できることが増えるほど、逆に「人にしかできないこと」「人の感性」「人の温度」が価値として見直されていくはずです。
そのため、これからは単なる「AI活用」ではなく、「人間中心のAI活用」「人の感性を活かす仕事」「AI時代だからこそ、人にしかできない価値」といった言葉が使われやすくなると考えられます。
本物感/オーセンティシティ
次に注目されそうなのが「本物感」です。
英語では「オーセンティシティ」と表現されることもあります。
これまでの企業発信では、整ったデザインやきれいな言葉、印象の良いスローガンが重視されてきました。
しかし、あまりにも整いすぎた発信は、かえって「作られた感じ」「広告っぽさ」「本音が見えない感じ」を与えることがあります。
今後は、表面的にきれいな発信よりも、実態があること、継続していること、無理に飾りすぎていないことが信頼につながっていくでしょう。
「本音の発信」「作られすぎないブランド」「ちゃんと中身がある取り組み」「見せかけではなく、続いていること」といった言葉は、これからのブランドづくりで重要になっていきそうです。
信頼経済
「信頼経済」も、これから注目される可能性が高い言葉です。
SNSやAIの普及によって、情報量は一気に増えました。
しかし、情報が増えすぎたことで、何が本当なのか、誰の言葉を信じればよいのかが分かりにくくなっています。
広告、口コミ、レビュー、インフルエンサーの発信、AIで作られた文章などがあふれる中で、最後に選ばれる基準は「信頼できるかどうか」になっていきます。
これからは「売る力」だけでなく、「信じてもらう力」がますます重要になるはずです。
たとえば、「信頼される会社」「透明な運営」「顔が見える商売」「売るより、信じてもらう」「口コミより、関係性」といった言葉は、今後さらに使われやすくなるでしょう。
ケア
「ケア」という言葉も、これからの社会にとって重要なキーワードになりそうです。
ケアというと、介護や医療、福祉のイメージが強いかもしれません。
しかし今後は、もっと広い意味でのケアが求められていくと考えられます。
たとえば、働く人をケアする、子育て中の人をケアする、地域の高齢者をケアする、心が疲れている人をケアする、支える側の人をケアする、といった考え方です。
これまでの社会は、どちらかというと「頑張ること」「成長すること」「効率を上げること」が重視されてきました。
しかし、疲れ切ってしまう人が増えている今の時代には、「すり減らさない」「置き去りにしない」「支える人を支える」といった価値観がより大切になっていくでしょう。
「ケアする社会」「ケアされる職場」「自分をすり減らさない働き方」「人を置き去りにしない仕組み」といった言葉は、これから広がっていく可能性があります。
ローカル・プライド
地方や地域に関する言葉としては、「ローカル・プライド」が注目されそうです。
これまで地域に関する言葉では、「地方創生」「地域共創」「地域活性化」などがよく使われてきました。
ただ、これらの言葉は少し行政的で、かたく感じられることもあります。
一方で、「ローカル・プライド」という言葉には、地域に対する誇りや愛着、自分たちの場所を大切にする感覚があります。
全国的に有名になることや、大都市に勝つことだけが価値ではありません。
これからは、「このまちで生きる」「地元を誇れる仕事」「地域の物語を残す」「小さなまちの価値を再編集する」といった考え方が、より重要になっていくのではないでしょうか。
特に地方の企業、店舗、観光、教育、医療、福祉、個人事業などでは、「地域で選ばれ続ける」という視点が大切になっていきそうです。
生活防衛
かなり現実的なキーワードとして、「生活防衛」も今後強くなっていくと考えられます。
物価高や将来不安が続く中で、多くの人は理想的な暮らしよりも、まずは日々の生活を守ることに関心を向けています。
高級感や華やかさよりも、「無理なく続けられる」「家計にやさしい」「必要なものをちゃんと選ぶ」といった価値観が強くなっています。
そのため、企業やサービスの発信でも、壮大な社会貢献より「お客様の暮らしにどう役立つのか」を伝えることが重要になっていくでしょう。
「暮らしを守る」「家計にやさしい選択」「続けられる価格」「無理しない暮らし」「小さな安心を積み重ねる」といった言葉は、生活者に届きやすい表現です。
マイクロコミュニティ
「コミュニティ」という言葉自体は、すでにかなり使われています。
しかし、これからはもっと小さく、濃いつながりを表す「マイクロコミュニティ」が注目されるかもしれません。
大きな社会運動や大規模なファンづくりよりも、価値観の近い人たちと小さく深くつながることに価値が生まれています。
SNSでも、ただフォロワー数を増やすことより、信頼してくれる人、何度も関わってくれる人、実際に応援してくれる人との関係性が大切になっています。
「小さなつながり」「半径5メートルのコミュニティ」「濃く、狭く、深く」「知っている人から買う」「フォロワー数より、関係性」といった言葉は、これからのマーケティングや地域ビジネスとも相性が良いでしょう。
静かなブランド
情報が多すぎる時代だからこそ、「静かなブランド」という考え方も出てきそうです。
今は、SNSでも広告でも、強い言葉や派手な表現があふれています。
目立つこと、バズること、短時間で印象を残すことが重視されてきました。
しかし、その反動として「うるさくないこと」「押し売りしないこと」「静かに信頼されること」に価値を感じる人も増えていくはずです。
特に、美容、治療院、士業、地域店舗、高単価サービス、デザイン、教育などの分野では、派手に売り込むよりも、落ち着いた信頼感を伝えるほうが合う場合があります。
「静かな発信」「盛らないブランド」「余白のあるデザイン」「押さずに選ばれる」「ちゃんと伝わる、うるさくない広報」といった言葉は、これからのブランディングに向いています。
再生/リジェネラティブ
「サステナブル」の次の言葉として、「再生」や「リジェネラティブ」も注目されそうです。
サステナブルは「持続可能」という意味です。
一方で、リジェネラティブは「再生する」「回復させる」という意味を持ちます。
つまり、ただ悪化させないだけではなく、失われたものを取り戻し、より良い状態に戻していくという考え方です。
環境問題だけでなく、地域、農業、観光、教育、福祉、まちづくり、人間関係などにも使いやすい言葉です。
「地域を再生する」「土壌を再生する」「関係性を再生する」「まちの記憶を再生する」「失われた価値を取り戻す」といった表現は、サステナブルよりも一歩踏み込んだ印象を与えます。
消耗しない生産性
これまでの社会では、「生産性を上げること」がとても重視されてきました。
早く、効率よく、たくさん成果を出すことが求められてきたのです。
しかし、効率化を追い求めるほど、人が疲れ切ってしまうこともあります。
AIによって作業の効率化が進むこれからの時代には、単に生産性を上げるだけでなく、「人が消耗しないこと」も大切になっていくでしょう。
そこで出てきそうなのが、「消耗しない生産性」という考え方です。
「急がない成長」「余白のある働き方」「小さく続ける経営」「続けられるペースで、ちゃんと良くする」といった言葉は、これからの働き方や経営のキーワードになっていくかもしれません。
次に来そうなキーワードをまとめると
これからトレンドになりそうな社会的キーワードをまとめると、次のようになります。
- 人間中心
- 本物感/オーセンティシティ
- 信頼経済
- ケア
- ローカル・プライド
- 生活防衛
- マイクロコミュニティ
- 静かなブランド
- 再生/リジェネラティブ
- 消耗しない生産性
これらの言葉に共通しているのは、「大きくて正しいスローガン」ではなく、「暮らしや仕事の実感に近い言葉」であることです。
SDGsや多様性のように、社会全体で掲げる大きな理念も大切です。
しかし、これからの時代に人の心を動かすのは、もっと身近で、具体的で、信頼できる言葉なのではないでしょうか。
これからの発信に必要なのは「体温のある言葉」
これからの企業や個人の発信では、ただ流行りの言葉を使うだけでは足りません。
むしろ、流行語をそのまま使うほど、どこかで見たような印象になってしまうこともあります。
大切なのは、その言葉が自分たちの仕事や地域、お客様の暮らしとどうつながっているのかを具体的に伝えることです。
たとえば、「SDGsに取り組んでいます」と言うよりも、「地域で長く続けられる商売を目指しています」と言ったほうが伝わることがあります。
「多様性を尊重しています」と言うよりも、「一人ひとりが無理なく働ける場所をつくっています」と言ったほうが、実感を持って受け取られるかもしれません。
これから求められるのは、立派な言葉ではなく、体温のある言葉です。
社会的に正しいことを掲げるだけではなく、自分たちの現場で何を大切にしているのか。
誰のどんな不安を減らし、どんな未来をつくろうとしているのか。
そこまで伝えられる言葉が、次の時代のトレンドになっていくのではないでしょうか。
まとめ
SDGsや多様性という言葉は、社会にとって大切な考え方であることに変わりはありません。
しかし、言葉としては広く浸透したことで、以前ほどの新鮮さやトレンド感は薄れてきています。
これからは、抽象的で大きなスローガンよりも、信頼、生活、人間らしさ、地域、ケア、本物感といった、より実感に近い言葉が求められていくでしょう。
特に、AIが広がり、情報があふれ、社会の不安定さが増している今だからこそ、「人間中心」「本物感」「信頼経済」「ケア」「生活防衛」「静かなブランド」といった言葉には大きな可能性があります。
これからの発信で大切なのは、ただ新しい言葉を使うことではありません。
その言葉に、自分たちの実態や想いがきちんと乗っているかどうかです。
流行語を追いかけるだけではなく、自分たちの仕事や地域、お客様の暮らしに本当に合う言葉を選ぶこと。
それが、これからの時代に選ばれる発信につながっていくのではないでしょうか。




